2015年7月25日土曜日

学会特別講演「大阪的食コミュニケーション」

江 弘毅先生の「大阪的食コミュニケーション」の講演を拝聴した。以下その要旨。
パブリックな場所、喫茶店やレストラン、駅など、家でも職場・学校でもない第3の空間がある、この空間は1990年代に確立されてきたそうである。ここは誰とも会わないでも良い自由な空間であり、近くの人にはむやみに話しかけない場所(儀礼的は無関心を装う場所)であった。この空間では他人の会話でも文脈が分かれば何も嫌には思わない特別な空間だった。しかし今日では、ITの普及で誰かと繋がることのできる空間に変わってきた。都市空間のコミュニケーションにおけるかような変貌があったのである。
こうなるとレスポンスが必要で、連絡が来ていないかどうかが気になる。電車の中でもスマホを覗き込みメールのチェックをしてしまう。グロバリゼーションで、全国どの町にも同じような店が進出してきた。客が来ると「いらっしゃいませ,こんにちわ」と挨拶を受けるが、店員と決して友達になるわけではない。何回行ってもなじみにならない。

大阪人の食空間は上記の空間と真逆になるという。店側と客、酒場では客同士にコミュニケーションがある。客が注文をしながら料理が決まっていく割烹スタイルができたのが大阪の「浜作」であったと言う。大阪はカウンターの店が、スカイレストランよりも下とは意識していない。自分のコミュニティーの中にある店で家族のようなコミュニケーションができる店こそがお勧めの店である。匿名的よりも実名的が優先される。関西弁領域では、コミュニケーションができれば、知り合いばかりで皆いい人おもろい人の思想がある。実名的と匿名的を使い分けできるのも都会人の所以ではあるが、顔と顔に担保された実名的コミュニティー性を良しとするスタンスが大阪人であるという。

コミュニケーションを排したほうが時間軸を短くすることができ、経済的かもしれない。大阪の食文化においては自分の目の前で食べ物が作られていく時間軸を共有しており、そこには店側と客とのコミュニケーションが存在する。新梅田商店街の店を覗くと、大阪人の食文化を知る良い機会になるかもしれない。

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